愚昧のハンカチ

さあ

これでお口を拭いて

 

差し出されたハンカチ

私は唇の血を

そっと拭う

 

美味しかった

 

祖父の戦争写真

母の白無垢

父の賞状

祖母の鏡台

 

兄のいじめでさえ

甘美であったーーー

 

蝉の脳みそを見た夏

蜻蛉の首が落ちた陰影

屋敷稲荷の静謐

折り紙の手裏剣探し

 

チャイムを押しても

誰も出てこない

ねえ

誰か遊んでよ

誰か

 

私の声は1999年の青空に消えた

 

遺跡の竪穴式住居

あのひんやりとした

墨を流し込んだ闇

 

私の幸せだった時代

その一つ一つを

擦り切れるまで再生した

 

差し出されたハンカチ

真っ白なそれに

着いてしまったシミは

永遠に消えない

 

いつまでも消えない

私というシミ

 

 

 

 

 

 

夕日メンテナンス

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月と詩人 Author はじめまして。 夕日メンテナンスと申します。 これまではXなどで詩を投稿していました。 どうぞよろしくお願いします。

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