①浅葱の懐月
如意の宝珠は海には無い
天の頂にも有りはしない
浅葱色のその懐に
しずかに良月はしまわれている
②魚の回廊
神欲の池水に棲む魚は
今日の寒雨に耐え
果てなき回廊をその身の内に備える
③旅立つ花
いつか僕らがこのままじゃなくなっても
永遠が何かわかったら旅に出てよ
そしたら僕は安心して花になって散るんだ
④午前4時の輪郭
世界が寝静まる頃
私と貴方はバターのように蕩け合う
それは肉体ではなく
魂の交わり
⑤ほどけない結び目
その結び目は
祖母がしっかり結えたもの
決してほどいてはならないよ
決してのぞいてはならないよ
その約束は
まるで呪いのようだった
⑥波紋のゆくえ
貴方の骨壷に
滴り落ちる水音
どこまで濁れば
人として死ねたのか
どこまで澄めば
魚として泳げたのか
太古の記憶を有するがゆえに
はざまに堕ちていく
その繁栄と愚かさ
貴方の魂の音は
どんな色を奏でていた?
⑦剥製と息吹き
貴方を剥製にした夜
震えるほど歓喜した
手に入れられたと
失うことはないと
ただ完璧じゃないのは
私の鼓動がうるさいこと
このノイズを止めれば
貴方と私
永遠に完成するのに
⑧塩の味しかしない夜
ひょっこり顔を出さないで
酒のつまみに
私の宝を盗むつもり?
どれだけ探しても
貴方は逃げてゆくのに
塩の在処だけ当ててゆく
私は塩以下なのか
観念なさい
真の宝は
貴方の臓物の塩辛よ
⑨神様の数え間違い
双子だったのに
いつから別人になったのか
貴方は私の片翼
私は貴方の愛の形
いつからだろう
どんなに交わっても
一緒になれないと
悟ってしまったのは
⑩残響の温度
朝を迎えて
それは羽ばたきに変わった
どこまでも続く
青と紫のグラデーション
貴方は気配だけ残して
爽やかに
夜明けの熱に溶けていった
⑪プラスチックの祈り
手提げ袋をください
貴方をまるごと
包み込めるくらいの
お箸は要らないです
代わりに
私というスプーンはいかが?
貴方を隅々まで
舐めとってあげる
⑫ほどく、あるいは、ちぎる
祖母からもらった
千代紙をちぎる
貴方の顔を思い出しながら
ちまちまと貼っていく
貴方の手を振り解いた
その体温だけは
そっと手のひらに乗せて
小さく
小さく
折りたたんでゆく
貴方と世界を歩くために
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