転生の記憶

月の宮居ではたらく女官

 

かつて私は人間だった

 

宮殿は嫦娥さまが主宰する

 

特に迦楼羅さまは優しくしてくれた

彼が一輪の花を差し出す

 

「天上の理は辛かろう

これは人間の愛する花だよ」

 

それは

かつて私が愛でた花

桃色のチューリップだった

 

幼い頃

公園で描いた絵が賞を獲った

 

懐かしい記憶が蘇る

 

私はどうして天に生まれたのか

その資格など無いのに

 

ここは美しい

けれど

どこか悲しかった

 

宮女のへびたちは

いつも値踏みをするような目で見る

 

耐え難かった

 

私は補陀落山への異動願いを出した

月光菩薩さまが取り次いでくださった

 

果たして願いは通るのか

 

大船の巨大な観音さま

祈るような気持ちで眺めていたあの頃

 

生まれ変わっても苦しみは続く

 

観音さまにあいたい

あの優しさの奥に宿る厳しさ

憧れた

どうしてもお側にお仕えしたかった

 

観音さまの道場で

水月を掴むような

果てしない行を修し

この魂を研磨したかった

 

人間だった幼き日

冷たいコンクリートを裸足で歩かされた

あの街灯だけが頼りの暗闇

 

あの頃よりマシなのは

私の憂いが行をしたいと願うから

 

栄光のチューリップは

長く保たず萎びてしまうだろう

 

それでいい

 

それがいい

 

 

 

 

 

 

夕日メンテナンス

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月と詩人 Author はじめまして。 夕日メンテナンスと申します。 これまではXなどで詩を投稿していました。 どうぞよろしくお願いします。

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