兜率天の夜は
音がまったく聞こえない
弥勒菩薩さまの
瞑想が始まるからだ
内院に不純物などない
ないはずなのに
弥勒は憂う
56億7000万年後を
ここから見渡す
幾万の美しい天界の灯りは
地球の影に隠れて
衆生の闇を照らせない
女の子がカッターで腕を切る
その痕は救いを求めた数
増えてゆく
したたり落ちる
赤、赤、赤
その紅蓮華に救いを求めるのか
彼女の冷え切った肌には
無数の線が刻まれている
北方の職人が樹液を採るように
刻んではしたたる命の水
今日もパックリ開いた傷口
脂肪の黄色がのぞいてる
この痛みが彼女を現世に繋ぐ
弥勒は憂う
何億だって待てないと
天界のどんな踊りも歌も
彼を寿いでくれない
喜足なんて嘘なのだ
あの青い星に咲く
紅い花
天界のどんな妙なる花より
美しく
弥勒の微笑みを歪ませるほど
痛かった
彼女のか細い声は
いくらチャンネルを合わせど
砂嵐に掻き消えて
弥勒の耳に届かない
今日も弥勒は憂う
夜に咲く
彼女の紅い花を
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