まろび出たもの

月にも黒点がある

その一つ一つに

瞑想する御仏が埋まる

 

月の宮居に仕える宮女たち

彼女らはへび

いつも化粧の話をしている

 

ある晩餐会のこと

水晶宮から

八大龍王の息子たちが招待された

どの顔立ちも聡明で精悍

 

一人の将がフォークで

皿の上の果実を突いたとき

赤い果肉からまろび出たのは

 

少女だった

 

無垢な顔をきょとんとさせて

彼は呆気にとられる

文殊菩薩さまが相席していた

 

これは人間の少女ですね

 

少女は状況を把握せず

艶めかしい肢体をくねらせ

悩ましげに首をひねる

 

女房たちは眉を顰める

まあいやらしい

何を誘っているのかしら

これだから人間は

 

長い舌をチロチロさせて

肉の器を持つ人間を卑しむ

 

清浄な月宮殿は

少女の血の匂いでいっぱいになる

 

将は驚く

 

人間の生臭さに

 

その不完全な美に圧倒された

 

月光菩薩の使いの兎が

申し訳なさそうに皿を下げる

 

お見苦しいところをお見せしました

 

将はその腕を掴む

いや

連れて帰ろう

 

龍宮へ戻る扉が開かれる

将は大切に少女を手のひらに包む

 

白銀の鱗を煌めかせ

何人たりとも有無を言わせず

冷たい海の底へ帰って行ったという

 

 

 

 

 

 

夕日メンテナンス

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月と詩人 Author はじめまして。 夕日メンテナンスと申します。 これまではXなどで詩を投稿していました。 どうぞよろしくお願いします。

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